「 なぁに、雪国育ちだからな。
　 こんなのはたいしたこっちゃない 」

引き取り手がつかなくなった、ひょう害リンゴ。
大きな農園がつぶれ、農業をやめる人が続出。

残った生産者さんたちも、
年収は例年の半分以下になり、
肥料を買うお金にも困っているらしいのです。


ところが、取材スタッフを出迎えたのは、
生産者さんたちの笑顔、笑顔、笑顔。

「 ほら、食べてみな 」

意外な光景に戸惑うスタッフへ、
メンバーの一人が、
傷ついたリンゴをそっと差し出しました。

歯をサックリ立てたとたん、
ほとばしるのは、みずみずしい果汁。
ぐんぐん持ち上がるのは、コクのような甘み。


・・・不思議な驚きでした。

まるで、
生きよう、生きようという力が一気にあふれるよう。
目のさめるような食感です。


生産者さんたちの笑顔は、どこからやってくるのか。
それは、旨さへの自信からやってくるのです。

「 そりゃ、目の前が真っ暗になりましてね 」

最初から、自信があったわけではありません。
メンバーの一人、木村さんを勇気づけてくれたのは、
あるお客様の存在でした。


ある日のこと、
ひょう害リンゴの噂を聞きつけた人から、
「 送ってください 」 とお便りをもらったそうです。

見た目が悪いから、売り物になるはずがない。
そう思って、いただいたのは運賃だけ。
数日して届けられたお便りには、こう書いてありました。

木村さんは語ります。

「 ひょう害だなんて言ったって、
　 リンゴがあるだけでも幸せです。

　 お召し上がりになれば、
　 良さを必ず分かっていただけるはずですから 」

ご自宅の窓辺には、
畑から摘みとった枝が活けてありました。

芽のふくらみを見ながら、
木村さんは思い描くのだとか。

今度はこうしてやろう、あんな工夫をしてやろう。
そうしたら、もっと旨くなるだろう。
お客様に、もっと喜んでいただけるだろう、と。

昨日より今日、今日より明日。
日に日に、おいしくなりますように。

それが、このリンゴを育てる、
生産者さんの心意気なのです。