池田さんの仕事は早朝から始まります。
まずは、ハウスまで軽トラックで水を運ぶこと。
元々干拓地だったこの一帯は、土壌の塩分濃度がとても高く、本来は作物なんて育ちようがない場所。
その塩分濃度は、
なんと塩害の一歩手前!
(※塩害:塩分によって作物が水を吸収できずに枯れてしまう被害)
井戸を掘って水を引こうとしても、塩水が湧き上がってきてしまうのだそう。
もちろん、塩水を作物に与えるわけにはいきません。
かといって、住宅地からも離れているこの辺りには、水道も伸びてきてはいないのです。
だから、水まき用の水は、わざわざ池田さん自身が運んできます。
しかし、この水も、やみくもにまくわけではありません。
塩トマトがおいしくなる理由は、土壌の塩分濃度が高いために、作物が水を吸収しにくいという環境にあります。
トマトには、水を控えることで、甘さがグッと増すという特性があるんです。
与えすぎてもダメ。与えなさすぎてもダメ。
その加減は、全て池田さんの長年の勘によるもの。
だから、水まき一つにしても決しておろそかにはできないんです。
その他にもやらなくてはならない作業は山のようにあります。
農薬を抑えた栽培方法はとにかく手がかかるもの。
「朝から晩まで、
ずっとハウスにおるとですよ。
トマトにつきっきりですたい」
淡々と語る池田さんの表情には、寡黙な職人の誇りが浮かんでいました。